IVR部門の紹介
IVR(Interventional Radiology)とは、X線(レントゲン)、CTや超音波などの画像診断装置を用いて、体の中を透かして見ながら、カテーテルや針などの細い医療器具を使用して、標的となる病気の治療を行う画期的な治療法です。外科手術のように全身麻酔でお腹や胸を切る必要はなく、多くの場合は局所麻酔で針穴程度(数mm)の傷口で体の奥にある臓器や血管の治療ができるため、患者さんの体への負担は圧倒的に少ないという特徴を持っています。治療後の傷はほとんど残ることはなく、治療後すみやかに日常生活に戻ることができ、入院期間も数日〜1週間程度と短期間です。1980年代に米国で始まった比較的新しい技術であり、日本では80年代の中頃から広まり始め、今やIVRは様々な病気の治療法として欠かすことのできない存在となっています。当院では2台のIVR-CT(CTを併設したX線透視装置)を含む最先端の画像診断装置とハイブリッド手術室(IVRと手術を同時に行うことが可能な部屋)を備えており、様々な病気に対して最先端の治療を行っております。
診療内容
脳と心臓以外のあらゆる臓器の病変に対して、年間約800件におよぶIVR診療を行っています。IVRは血管からアプローチする血管系IVRと血管以外からアプローチする非血管系IVRに分けることができますが、当院で行っている代表的なIVRは以下の通りとなっています。
血管系IVR
- 外傷性出血、喀血や産後出血などの出血に対する塞栓術 (TAE、BAE及びUAE)
- 大動脈瘤・大動脈解離に対するステントグラフト内挿術 (EVAR/TEVAR)
- 下肢閉塞性動脈硬化症や透析シャント不全に対する血管形成術 (PTA及びVAIVT)
- 内臓動脈瘤に対する動脈塞栓術(TAE)
- 血管奇形(動静脈奇形、静脈奇形など)に対する塞栓術・硬化療法
- 肝がんや頭頸部がんに対する動注化学療法及び化学動脈塞栓術 (TAI及びTACE)
- 子宮筋腫に対する子宮動脈塞栓術(UAE)
- 食道・胃静脈瘤及び門脈圧亢進症に対する各種IVR(BRTO及びPTO、PSE)
- 大静脈症候群に対するステント留置術
非血管系IVR
- 肺がん、腎がんや骨腫瘍などに対するラジオ波焼灼術(RFA)
- 肺、肝臓、腎臓や骨などの腫瘍性病変に対する経皮的針生検
- 膿瘍や異常液体貯留に対する穿刺ドレナージ(排液)術
- 癌性疼痛に対する神経ブロック
なお、IVRの詳細については日本インターベンショナルラジオロジー学会(日本IVR学会)ホームページをご参照ください。
(https://www.jsir.or.jp/shimin/)
当院の大きな特徴は、高度救命救急センターを併設しているため、救急疾患に対するIVRが非常に多いことが挙げられます。全ての緊急症例に対して24時間365日オンコールで対応を行っております。また、東京都の急性大動脈スーパーネットワークの緊急重点病院に属しており、心臓血管外科及び循環器内科と協力して大動脈診療にあたり、大動脈瘤や大動脈解離に対するステントグラフト内挿術を行っています。その他にも消化器内科、肝胆膵外科、呼吸器内科や呼吸器外科などの様々な診療科と定期的にカンファレンスを行い、密接に連携しながら専門的な診療を行っています。
教育体制
当院は放射線カテーテル治療専門医(IVR専門医)修練施設に認定されており、全ての症例において放射線カテーテル治療専門医の指導の下、年間約800件におよぶ高度のIVR診療が行われ、放射線カテーテル治療専門医がスムーズに取得できる体制を構築しています。
また、研究体制も充実しており、様々な領域に関する臨床研究の他、文科省科学研究費や厚労省班研究費などによる研究も行われています。直近の5年間で当科から発表したIVR関連の論文数は13編あり、内外で高い評価を得ています。さらに、定期的に国内外の学会で研究成果を発表しています。
診療実績
放射線科施行のIVR症例件数
2015年:1030件(内、緊急IVR件数 297件)
2014年:1154件(内、緊急IVR件数 329件)
2013年:1138件(内、緊急IVR件数 278件)